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小悪魔の超絶論理〜Chi sei tu?

狂乱の中間部。

私は楽譜に歌詞の訳を書かない(日本語に引きずられるから)のですが、ト書きの訳は書きます。ベッリーニはけっこうマメにト書きが書いてある気がします。

(ジョルジョに)あなたは、どなた?
(思い出して、嬉しそうに)ああ、私のお父さまね
(悲しく)アルトゥーロは? 私の愛する方は? おっしゃって!

この後、エルヴィーラの返事がわりとマトモだったことに、おじさまは微笑んで、涙を拭う仕草をするはずなのですが、これは書いていません。歌詞でわかることは書かないよ、ということなのだと思います。次の6/8は踊っているのだと思うのですが、これも書いていません。

(ジョルジョに)踊ってくださるわね? 結婚式へ行きましょう

マトモに見えたエルヴィーラは、やっぱりオカシイ。書いてないけど、おじさまの手をひっぱって、踊るようにくるっと回ったところで、誰かわからないけど泣いている人(リッカルド)にバッタリ、かな。

(リッカルドに気づいて、手をとって)この方、泣いているわ…
(ジョルジョに)あの方、泣いているの。愛のためかしら?

知らない(ほんとうは知らなくないけど)男の人が、自分を見て泣いている、時に手を取りに行けるかなあ。ちょっと怖いやん。まして自分の保護者に、そのことを言いにいくような子に。

(自分自身に)泣いている…愛しているのね
(リッカルドに)聞いて。そしておっしゃって。愛しておられるの?

だから「手をとって」の場所は「聞いて」だと思います。リッカルドはエルヴィーラがジョルジョを思い出したように、自分を思い出すと期待しています。でもエルヴィーラの頭の中は、「泣いている→愛しているから→この人も恋人に逃げられたんだ→私にはあなたの気持ちがわかるわ…私たち同じね」という、超絶論理。だから、エルヴィーラは本来嫌っているリッカルドに対して、ここだけはとても優しい気持ちで接します。

(悲しく)ああ、また泣いてしまわれた

リッカルドは、エルヴィーラに思い出してもらえず、彼女を愛しているということすら言えず。でも彼もかなり恋に狂っているので、「ああなんて優しいいい子なんだろう。どうして俺は彼女に選ばれなかったんだろう」ぐらい。一人前のいい男が、ぐさぐさのぎっちょんぎっちょんに傷ついて、だからまた泣いちゃったんだ。自分が彼を傷つけているんだ、ということは、エルヴィーラは全く、絶対に考えてはならない。いやはや…。

で、それを見かねたおじさま。そりゃマトモな神経していたら耐えられないです。

ジョルジョ:(抱きしめて)愛する娘よ、落ち着きなさい。
(状況=アルトゥーロが逃げて、いない、を思い出して)いいえ! ああもう会えないのね!
(絶望の哀しみを込めて)私を死なせてください、でなければ愛する人を返して
(がっくりと、動かないで)

こんどは矛先がおじさまに。思いっきり無理筋です。ワガママの極地です。これだけエルヴィーラを愛して、心配して、彼女のために尽くして憔悴しきっている人に向かってねえ。でもやっぱり、自分がおじさまを困らせているということにすら、気づいちゃいけないのです。はあ…。

エルヴィーラの狂気というのは、ルチーアのような崩壊型ではないので、彼女の中ではくっきりはっきり理屈が通っていないといけない。「【私が】こんなに愛しているのにアルトゥーロはいない。ここにいて私を慰めている【べき】なのにいない。アルトゥーロと一緒にいたいのに、【誰もそれを叶えてくれない】。【そんなことはありえない】」

……無理難題の結果が、次の「おじさま、リッカルドを脅迫する」の二重唱か。エルヴィーラ、むっちゃ小悪魔。ちなみに、私はこのシーンとても好きです。

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