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ルチーア終演

去年の夏から取り組んだ「ランメルモールのルチーア」とうとう終演しました。お客様、共催してくださった会場(ソノリウム様)・スタッフの方々、共演者の皆様、ほんとうにありがとうございました。

本番っていうのは独特のノリがあって、私はどちらかというと、本番だけは冷静にできる派です。お稽古はお稽古なので、リスクとってやってみて、ダメだったら練習するか他の方法を考える、という繰り返しですが、本番は失敗できないし、どこでアクシデントが起こってもカバーしなきゃいけない。特に演技が入るとそういう意識が強くなります。90点か60点のリスクを避けて、75点を取りに行くかんじ。もちろん手を抜くという意味ではなくて、余力を残しておくということ。

それを大前提として、ほんとうに精一杯、今できる最高のものを出せたと思うので、悔いはありません。谷川さんのエドガルド、村松さんのエンリーコ、別府さんのアリーザ、そして小森さんの伴奏、ほんとうに安心して、信頼してやらせていただけて、とても楽しかった。終わっちゃったのがすごくさびしい…。

歌の課題は、声の中でアジリタをやること(音に声を付けていかない)。ピッチがズレるのを怖がって、音を掴みにいかないこと。結果的にレガートラインが美しくなること。そして、高音のPPとか、ソットヴォーチェが一番綺麗なところを聞かせるように歌うこと。うん、うまくいったところもあったかな。

当日のゲネがあったので、立ちをやったのは合計5回。回を追うごとに役に入ってきて、エドガルドとのいちゃいちゃ度が増してたような。そんなもんですね。背が近いので、しっかり抱き合って歌うと頬に息がかかるんだなあとか思いながら、本番歌っていました(笑)。演出はいないし、演技の打ち合わせも特にしない。基本的には男声のリードにお任せですが、相手がどうしたがっているのか、自分がどうしたいのか、空気の読み合いが楽しい。歌詞をしっかり読んでいて、気持ちが合っていれば、演技も合うはずで、合うととても楽しい。

が…。Qui di sposa eterna fede.のところ、「右手を上げて」言われたら、次の台詞は「右手を上げて(=誓約の形)」聞かなきゃいけない。それはお約束なのですが、通し稽古で反応できなくて、当日修正。こういうのはダメダメです。右手、というのは和解、結婚、誓いの印で、エドガルドとの二重唱で、エドガルドの「エンリーコに右手を差し出し」というのは和解。「君(ルチーア)の右手を求めよう」というのは結婚の申し込み。狂乱で、「右手をください」というのは結婚の誓いをしてください、という意味。

エンリーコとの二重唱は、特に迷うことはなかったのですが、歌い方を含めて、対決モードから、もっと冷たい感じにしました。演技的に一番面白いのは、「ウィリアム王が死に、マリーアが王位についた」というところで、政治情勢と自分の運命の関係を、ルチーアがちゃんと理解して、追いつめられていくところです。ルチーアちゃんは暗いですが賢いのです。あと、「地において受け入れられないことが、天ではそうではありませんよう」というところは、ちょっとこだわって、テンポを動かしても、演技をつけて歌いました。

狂乱の演技で最後まで迷ったのが、どこでエドガルドを見つけるか。最初に名前を呼ぶところで見つけるのがスタンダードな気がするのですが、私は、見えるか見えないかの遠くにいて、「足が震える」の後の「泉に座りましょう」ではじめて一緒にいることにしていました。でもここはまだぼんやりとしていて、ほんとうに妄想に入り込むのは、「祭壇の下に隠れましょう」。カデンツ後の中間部は、一人だったので、エドガルドの態度が急に冷たくなって=結婚式の時の「君の筆跡か?〜呪われよ!」のところの回想…というか、あの時ルチーアはエドガルドに一言も弁解できていない。その後悔が流れ出したかのような感じに。で、妄想のエドガルドに去られてSpargiに入るのですが、ルチーアはエドガルドに去られたら死ぬと信じている(エンリーコとの二重唱にあるように)。むしろ、もう死ねるんだと思っている。この部分は、この後のエドガルドのアリアと対になっているし、エドガルドとの二重唱で「私の心はあなたとともに行きます」と言ったことを思い出していないといけない。自分の体のなかに、自分の心がない。この空っぽな感じがSpargiの特徴な気がします。最後のEsは、私は瞬間的な正気で歌っています。

狂乱の歌い終わり、倒れたので、みんなにビックリされたみたいです。稽古でやってなかったかなあ。でも、倒れないわけにはいかなくないですか? バッタリ。

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